流動浸漬粉体塗装とは
パウダーを満たした槽の底から圧縮空気や不活性ガスを送り込み粉体に流動性を持たせた状態のところに熱したワークを浸して一気にコーティングする方法で、粉体塗装:パウダーコーティングの一種です。流動床塗装とかフィルダイズベッド塗装とも呼ばれます。
ワークに付着したパウダーが熱で溶けることで塗膜が形成されます。流動槽の中でモコモコ吹き上がるパウダーは面白くて不思議な光景です。また、槽から取り上げた時には既に美しい塗膜が形成されていて感激を覚えます。
塗料を完全に溶かしきり、塗膜を平滑にするために塗装後に再加熱する場合もあります。
膜厚はワークの蓄熱量により変動しますが、静電粉体塗装よりはるかに厚く最大で1ミリ程度を得ることが出来ます。
電気絶縁性、耐食性、耐候製、耐薬品性に極めて優れており、重要電気設備や農機具、土中に埋設する配管など過酷な用途に好適です。
塗装にかかる時間は5秒~15秒程度と比較的短時間ですが、主に人手による作業であり生産性があまりよろしくありません。近年はロボット技術を導入し、余熱から塗装~固化までの完全自動塗装が試みられています。
長所
・凹形状でも塗料が入る
・電気を通さないワークでも塗装できる
・極厚の塗膜が得られる
短所
・生産性が低い
・薄膜の形成が困難
・槽をパウダーで満たす必要があるため小ロットでもたくさんのパウダーが必要
・膜厚のバラツキが大きい
・あらかじめワークを熱しておく必要がある
・小さなワークは熱が冷めやすいので向かない
・薄いワークは熱でゆがむ可能性がある
・熱容量の異なる異種材料を組み合わせたワークは困難
当社の取り組み
流動浸漬粉体塗装は提携工場にて行っており塗装後の再加熱は標準としています。
パウダーは化学物飛散しやすいため、国内同様SDS(旧MSDS)Safety Data Sheet : 安全データシートに基づいて適切に管理されます。
また、製品の要求品質などによって、静電粉体塗装や静電流動粉体塗装など、最適な塗装方法を選択提案しています。
余熱 → 流動槽浸漬 → 再加熱 → 冷却 → 固化
流動槽 |
加熱炉 |
●前処理
金属を腐食から守るために従来から塗装前にリン酸塩皮膜処理を実施することが広く行われています。
当社では地球環境への影響や人体に重篤な影響をおよぼすリン酸を含まない無リン酸化剤にて前処理を行っています。
カドミウム等重金属も含まず、スラッジも殆ど発生しないことから排水処理も容易です
鉄、亜鉛メッキ材、アルミニウムに適応します。
脱脂 → 脱脂水洗 → 純水洗浄 → 化成処理 →
化成水洗 → 純水洗浄 → 乾燥
●標準仕様
塗膜厚 :200μm~1500μm
硬度 :2H以上
ロット :1個~
素材 :鉄、アルミニウム、亜鉛、亜鉛めっき品、
密着性アルマイト処理品
●塗料の種類
パウダー材質 :エポキシ、ナイロン、ポリエチレン、
ポリプロピレン、塩化ピニ-ル(PVC)、セルロースアセテートブチレート(CAB)、フッ素、他
主要パウダーメーカー:AKzon Nobel、Tiger powder、
TCI POWDER、DUPONT
●標準試験
膜厚試験衝撃試験、曲げ試験、クロスカット試験、密着性試験、
鉛筆硬度試験、色差・色収差検査、
光沢度検査塩水噴霧試験(中性塩水噴霧試験 NSS:Neutral Salt Spray test)2000時間
●個別試験
RoHsテスト、UV試験、湿熱試験、キセノンランプ試験、
フロリダ暴露試験