溶融亜鉛めっきとは
溶融亜鉛めっき「ようゆうあえんめっき」は、高熱で溶けた亜鉛の槽に鉄を浸してめっきする製法で、単に亜鉛メッキと呼ばれたり、ドブメッキとかドブ漬けメッキとも言われます。
優れた防錆能力とコストにより構造材のメッキとしてはもっとも普及しており、ビルの非常階段、空調ダクト、電柱、排水溝のグレーチングなど、街を歩けばあちこちにその姿を見る事が出来ます。
亜鉛めっきは鉄をめっき皮膜で保護する「保護皮膜作用」だけでなく、鉄が露出してしまうような傷が付いても亜鉛が溶け出して酸化膜を形成、鉄を保護する「犠牲防食作用」という二つの作用があり、母材の錆防止を実現しています。塗装や電気めっきと異なり、鉄と亜鉛から接触して形成される合金層により、長期にわたって剥がれることがありません。
保護皮膜作用:亜鉛の酸化被膜が形成されて、鉄が錆にくくなる。鉄と結合して合金層を形成する。
犠牲防食作用:鉄より亜鉛が先に錆びて錆の膜で保護する。酸化膜層を形成する。
溶融亜鉛めっきの品質トラブル
溶融亜鉛めっきは単純で簡単な製法ではありますが、めっき完了に至るまで沢山の工程があり、人手による作業が多く、管理が不徹底だと思わぬ不良が発生してしまいます。決められた加工方法を守り、しっかりチェックしていくことが重要です。
・剥がれ
溶融亜鉛めっきは密着性に優れており、剥がれてしまうことはあまり起きませんが、注意点があります。
1.下地処理
他のめっきや塗装と同じく、錆の除去、油分の除去、汚れの除去などをしっかり行って鉄表面を整えておく必要があります。
2.衝撃
めっきは硬くて脆いため、衝撃によって割れて剥がれてしまう場合があります。衝撃が加わるような用途には注意が必要です。
3.板厚
薄い鉄板に厚めっきは剥がれの原因となります。曲がる力が加わる鉄板には薄くメッキ加工します。
・液だれ
ドブ漬け後にめっき液が垂れてつららのようになったり、隅のほうに液だまりが出来てしまう事があります。
・補修
フック等で引っかけて吊してめっき槽に入れることから、フックが接触しているところは隠れてメッキされません。この部分は後から亜鉛めっき塗料で補修するのが一般的ですが、補修の膜厚や補修剤によっては乾燥後の収縮によって割れが発生する場合があります。
当社の特徴
溶融亜鉛めっきは、麗水工場からクルマで1時間半ほどの提携工場で行っています。JIS H 8641に対応する他、地の利を活かした短納期低コスト、MECOでクオリティコントロールしています。より高品質で生産性の高いめっきを確保するために、スカラップや液だれが発生しにくいの吊り孔位置や空気や液溜まりしやすい死角部の孔開けなど、製造性考慮設計(Design for manufacturing: DFM)していることが大きな特徴です。
尚、母材の状態、下地処理、液だれ、補修等については特に注視している他、意外と見落とされがちな補修剤のグレードについても事前にお客様と協議したうえでニーズに応じて選定、実施されます。
・母材状態
溶接カス(スラグ)の除去
レーザー溶断部に形成された酸化物(黒錆・黒皮)の除去
払い出し前の全数検査
・下地処理
母材受け入れ全数検査
塩分除去(海塩粒子、融雪剤の高圧水洗洗浄)
めっき直前の脱脂、酸洗い作業、サンドブラスト
・めっき
液温、浸漬時間の管理
・補修
ジンクリッチペイントの選定
高濃度亜鉛末塗料(90%以上)、亜鉛末塗料(90%未満)、有機系、無機系、1液、2液
1種(油計)、2種(合成樹脂系)
グレー(標準色調)、シルバー(アルミ含有)
・膜厚測定
JIS H 0401
めっきに適さないもの
・例えば中空パイプなど空気を密閉した中空密閉構造物(空気膨張爆発)
断面積の20%以上の開口部を設けて対応。
・ひどい赤さび、過剰なレーザー溶断、高周波曲げに等による酸化が激しいもの
・鋳物
・サンドブラストの際に死角となる構造があるもの
・母材の厚みに極端な差がある組み合わせのもの
・異種金属、異種鋼材が組み合わされたもの
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